資格・検定の合格年次は新しいほうがよいとは限らない、という話

 情報処理技術者という国家資格では、合格証書の番号に合格年次が含まれるようになっている。例えば2005年10月の試験で合格したならば、合格証書の番号は「第...-2005-10-...号」のようになる。
 これは、資格を取得した年次を明らかにすることで、資格試験によって認定された知識や技能がどれだけ新鮮であるかを形式的に証明することができる機能をもたせるために取り入れられた工夫である。


 かつての情報処理技術者の合格証書ではこのような機能が搭載されておらず、第1種や第2種といった試験の区分も今とは若干ちがっていた。
 その当時に私が取得した区分に、「データベーススペシャリスト」という資格がある。これは現在の「テクニカルエンジニア(データベース)」に相当する区分である。


 保有資格の名称としては情報処理技術者(データベース)とでも書いておけば両者を指し示すことができるので問題がないのだが、問題は合格年次を形式的に示すことができない点である。
 しかも厳密には区分の名称が今とは異なっていることから、“ひょっとして知識が古くなってるんじゃネーノ?”と勘ぐられかねない点だ。
 これは仕方のないことで、情報処理技術者では同日の同時間帯に複数の区分の試験が行なわれることから、一度取得したものを何度を受けなおすのは効率的ではない。(他の区分に挑戦するのが望ましい)
 幸い、ウェブログ図書館という試みで実務的にも知識や技能を活用しているので、すごい勢いで知識が陳腐化していることはないはずだ。
 「オンライン技術者 → ネットワークスペシャリスト → テクニカルエンジニア(ネットワーク)」と変遷し、インターネットの普及で技術の変化がめまぐるしいネットワーク分野に比べて、若干まったりしているのも幸いしていると思われる。
 また私の場合、データベーススペシャリスト保有者であると称することは、「若くして高度技術者の区分に合格しました」ということを示せる点でかえって有利な点もあることを見逃せない。


 合格年次が古いことが意味を持つものとして、多肢選択式問題の導入やマークシートの採用などによる資格・検定の質的変化があげられる。
 つまり、過去に出題された問題を意味も分からず丸暗記することや、山勘で選んだ選択肢が的中することで合格につながる人が増え、ようするに試験が攻略しやすくなるという変化である。
 私の場合、いちおう電気通信主任技術者(伝送交換1種)と技術士補情報工学部門)という国家資格では専門科目が記述式だった時代に取得しているのだが、いかがなものだろう。多肢選択式になると、途中解答に対する部分点がもらえなくなるとか、重箱の隅をつつくような細かい知識が出題されるようになるといった変化もありうるので、一概に難易度を比較することはできないと考えるが。


 あと、中小企業診断士に関していうと、この国家資格では今年(2006年度)試験制度の改定が予定されており注目している。
 この点、かつての中小企業診断士試験では、1次試験が筆記式で難関という特徴があったものの、2次試験の「中小企業対策」という科目ではひたすら丸暗記が求められるという非建設的なところ*1があった。
 また、試験の部門が商業・鉱工業・情報の3部門に分かれており、商業部門で資格を取得した中小企業診断士は工場など生産現場のことがまったく分からないといったこともままあった。*2
 そういう意味では、現制度で合格しておいてよかったなと思っている。1次試験の質的変化については、別の手段で能力証明(マルバツ式じゃなくても対応できますといった能力の証明)をするしかないだろう。
 なお試験制度の改定においては、あまり旧制度の合格者がバカにされることがないよう注意していただきたい。かといって、合格が容易になってしまって資格自体の価値が下落するのも困ったことなのだが。

*1:インターネットの普及、およびWeb 2.0的な発想が人口に膾炙するに伴って、このような努力(覚えて溜め込むしか能がない暗記バカ)は意味を失いつつあるといえる。

*2:そういう事情を反映して、商業施設士において中小企業診断士として受験資格を得るためには商業部門のそれに限るという制限があったりした。