階層的分類と非階層的分類は表裏の関係
先日公開されたことのは十進分類法(KDC)*1においては、コンテンツに対して階層的な分類法を採用している。それと同時にコンテンツに対しては、複数の分類記号を割り当てることを可能としている。
そのため、タクソノミー(taxonomy)と言われる階層的・系統的な分類でありながら、近年フォークソノミー(folksonomy)として知られるようになった非階層的分類の特徴をあわせもつものとなっている。
フォークソノミーの典型例は、はてなブックマークなどのソーシャル・ブックマークである。利用者はタグ(tag)と呼ばれる類別辞を各々自由につけることができ、そうして付されたタグの総体が結果的にコンテンツの分類を示すことになる。
一冊の本に対して一つの記号が割り振られる日本十進分類法(NDC)と違って、閾ペディアことのはの記事には複数の分類を割り当てることが可能である。したがって、非常に柔軟な運用となり、執筆時にどれか一つの分類を選ばなければならないといったプレッシャーがない。(ことのは十進分類法「NDCとの違い」より)
階層的分類と非階層的分類の同居は、ことのは十進分類法の作者松永英明氏の工夫のたまものである。
ここでブログ図書館の人として付言するなら、実は非階層的と見られているタグによる分類であっても、論理必然的に階層性を内蔵している。
例えば、あるソーシャル・ブックマークで使われているタグを[a]および[b]および[c]とする。すると、あるコンテンツにつけられるタグの組み合わせの可能性は、以下の8通りである。
1.タグなし 2.[a] 3.[b] 4.[c] 5.[a][b] 6.[b][c] 7.[c][a] 8.[a][b][c]
ここで、全てのタグがつけられた状態[a][b][c]から、その中の一つのタグを除いた状態を3通り作り出すことができる。
[a][b][c] → [a][b] または [b][c] または [c][a]
さらに、二つのタグがつけられた状態から一つのタグを除いた状態を作り出すことができる。
[a][b] → [a] または [b]
[b][c] → [b] または [c]
[c][a] → [c] または [a]
最後に、一つのタグがつけられた状態からそのタグを除いた状態を作り出すことができる。
[a] → タグなし
[b] → タグなし
[c] → タグなし
上述のつながりを、[a][b][c]を下に置き「タグなし」を上に置いて図式化すると、以下のようになる。
タグなし / | \ [a] [b] [c] |\/|_/| |/ ̄|/\| [a][b] [b][c] [c][a] \ | / [a][b][c]
このような階層関係は、どんなにタグの種類が増えても成り立つことであって、冪(べき)集合(部分集合の全体がつくる集合:あり得る組み合わせを網羅したもの)の特徴である。
松永英明氏はMediaWikiの特徴として「カテゴリ分けが非常に柔軟に使える」と指摘するが、分類を集合的に把握することはあまり想定されていないと見るが如何だろうか。
例えば、[ことば][タレント][近畿]というタグがつけられたコンテンツがあったとして、[ことば][タレント](タレントの言葉遣い:しょこたんとか)や[タレント][近畿](大阪のタレント事情:吉本興業とか)や[近畿][ことば](関西弁:ことのはの中の人とか)といったコンテンツにすんなり移動できるなら便利だろう。
地理区分にかかる補助表を修正しました
松永英明氏による記事「極私的百科「閾ペディアことのは」のための「ことのは十進分類法」」における“立論”と、コメント欄におけるid:myrmecoleon氏の指摘によって判明したのだが、ウェブログ図書館の地理区分のデータが一部誤っておりました。入力間違いと思われます。
こっそり書き換えるわけにはいかず、ここで修正の事実をお知らせし、お詫びいたします。
で、入力間違いがあったのは日本の中部地方のデータなのだが、実は修正後も以下のとおりいまひとつ境界がはっきりしなかったりする。(;´∀`)
‐14 北陸地方
‐15 中部地方
(マイナス記号は一種の接尾辞であることを意味する:-ingで英語の現在進行形を表わすようなもの)
北陸地方は本州中央部の日本海側なので、中部地方にも含まれるような気がするのだが…
この点、『日本十進分類法』(isbn:4820495100)の補助表を参照すると、以下のように記載されている。
‐14 北陸地方
‐141 新潟県
‐142 富山県
‐143 石川県
‐144 福井県
‐15 中部地方:東山・東海地方 *北陸→‐14
‐151 山梨県
‐152 長野県
‐153 岐阜県
‐154 静岡県
‐155 愛知県
‐156 三重県
「*北陸 → ‐14」とは“北陸地方の四県は地理区分として‐14を参照せよ”ということなので、結局中部地方の十県は上記のように区分されることになる(NDCこと日本十進分類法では)。
だいいち、北陸地方の独立性(?)とは政治経済的にも微妙なところがあって、例えば経済産業省の出先機関として北陸支局は中部経済産業局(名古屋市)の附属機関であるが、中小企業基盤整備機構の北陸支部はその他の支部(関東支部や中部支部など)と並列の関係にある。
ちなみに、山梨県が一見関東地方に思えるのは、「首都圏」なる比較的新しい概念にわれわれが引っ張られているせいである。(それに対して「北陸」の概念は律令制とかの時代にまでさかのぼるので厄介である)
「特定領域の解答を見出せる力量」
いわば顧客の無知につけこむ専門家でなく顧客のソリューション(課題の解決)に資する専門家を志向する、という観点から近頃考えることが多い。参考になる指摘を見つけたので紹介しておきます。(長平彰夫・西尾好司編著『動き出した産学官連携』中央経済社(2003):204-205頁(isbn:4502912905) より)
専門家層の育成については、先にベンチャー企業のなかに入って牽引していく専門経営者が得がたいことを記したが、外部でサポート環境を提供する専門家層の充実についてに彼我の差は大きい。これは日米ではもちろん制度が異なり、法体系も異なるので、専門家に求めるものがそもそも異なっているということが指摘されるだろう。また絶対数も足りない。そもそもわが国では、制度や規則は、お上が十分に練り上げたうえで施行し、社会全体の調和はほぼ保たれていたという前提で運営されているものと考えられる。このような環境下で専門家が果たす役割は、規則等への準拠性のチェックや制度の解説が主で、自分で制度をアレンジするようなスタンスにはなかなか立ちにくい。
確かにそのようなスタンスにはなかなか立ちにくい。
困るのは、違法ではないが前例がない場合(ブログ図書館もそうだ)に思考が停止すること。
一方でこれまでわが国のベンチャー企業の行動様式のいくつかはこのような規則の間隙を突いて素早く売上等を伸ばしてきた例もある。かりにこれを規制しようというときは、原則として規制・法律を改定するので時間がかかるので、このようなニッチ的な行動戦略がとられるメリットは大きかった。しかし、大学発ベンチャーの場合は、「大学発」であるという立場と、またR&Dベンチャーであるので、将来に得られた成果が広く影響を与える可能性があり、規範的な制度については正面から取り組まなければならないことが多いだろう。ここで求められるのが、専門家がソリューションプロバイダーに変革していかなければならないことだろう。
これはホリえもんや村上ファンドのことか。ちなみに本書が刊行されたのは2003年11月。
残念ながら、わが国では通常専門家の多くは資格者であっても真に専門家といえる人材は非常に少ない。わが国では、弁護士といえば法務の専門家、会計士・税理士といえば会計・税の専門家と一般に思われているが、そもそもその括りが大きすぎる。たとえば、求められるのは、ベンチャー企業のパテント戦略に関するソリューションであったり、資本政策に特化した税務のアドバイスを求めたとしても、これにきちっと対応できる専門家は得がたい。
「非常に少ない」については、刊行後3年の年月を割り引かなければなるまい。
統計値ではなく感覚的な話になるけれど、例えばブロガーとして知られる方々の中にも「真に専門家といえる人材」を何人も挙げることが出来ると思うがいかがか。
これは能力の問題というよりも、これまでは大学発ベンチャーに求められるような機能を発揮する機会が少なかったためと考えられ、大学レベルで強力なサポーティング人材のネットワークを作り、課題に集中して対処していくことにより、短期間のうちに学習効果は高まるものと考えられる。重要なことは、条文について幅広く知っているのを専門家として遇するのではなく、特定領域の解答を見出せる力量を専門性として見ることが必要だろう。
この段落については同意。
ちなみに、ウェブ上の図書館において「特定領域の解答を見出せる力量」というと、何と言っても“蔵書(コンテンツ)をいかに増やすか”に資する力量であると考える。
つまり、いまだ存在しないコンテンツを生み出すよう作り手に働きかける力量である。
これはコラボレーション(協働)やファシリテーション(促進)といわれる領域で、編集者に伴う専門性に通じる。これは読書が好きとか選書に長けているとかだけでは不足であって、高度な対人能力が必要になる。*1
また一方、既にネット外に存在しているコンテンツを電子化するといった際には、権利関係を処理する力量が求められる。法的知識に加えて、交渉能力やプロジェクト・マネジメントの能力が求められよう。
*1:以前NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」で紹介された編集者の石原正康氏が好例。
「nami社会保障通信」のブログ記事群の紹介
nami社会保障通信のブログ記事から、「2006年版厚生労働白書を読む」をブログ記事群にしました。(nami社会保障通信の中の人=id:nami-a)
「2006年版厚生労働白書を読む」
http://library.jienology.com/data.php?no=9300
「ブログ記事群」というのは、関連する複数のブログ記事をひとつのデータとして登録しているものです。
「2006年版厚生労働白書を読む」の場合、ブログ記事の登録区分が
の4か所にまたがっていますが、上記ブログ記事群は「364 社会保障」に登録されています。これは、中心となる話題が社会保障にあると見られ、また社会保険労務士であるnami氏の視点で書かれていることを考慮したためです。
以前はてなグループでも述べましたけど、主題がはっきりしていればわりと一義的または択一的に登録区分が決まるわけです。(逆に言うと主題が定まらないグダグダなエントリーは図書館向きではない)
ただし複数の分野を総合・包括する視点があれば「総記」の枠(「364 社会保障」に対する「36 社会」;「36 社会」に対する「3 社会科学」)で把握される可能性があります。
柔道の有段者は「柔道」に分類され、空手の有段者は「空手」に分類される。
もし両方で段位を取得していたら、高い段位の方で分類する。
段位や受賞歴などが同じならば、略歴紹介などで最初に出てくるほうで分類するという形式基準による。
両方の特徴を組み合わせて戦っているならば、「総合格闘技」(K1など)に分類される可能性もある。
なお、「2006年版白書を読む」として一連のブログ記事群がまとめられておりますので、こちらもよろしく。
ブログ記事群の連合
http://library.jienology.com/union.php
エネルギー管理士試験
先日、「エネルギー管理士」の試験を受けてきました。
これは先般「省エネルギー法」が改正されて、従来は熱エネルギーと電気エネルギーが別系統の基準で規制の下にありそれに要する資格も別々だったのが、両者を統一的な基準で規制することになり、資格も統合されることになったためです。
熱の使用量もほどほど(規制外)、電気の使用量もほどほど(規制外)、という工場が、熱と電気の使用量を合算すれば結構な使用量(規制水準を上回る)であるから今後は規制対象になるといった効果があります。制度としては統合・簡素化ですが、実質は規制強化といえます。法改正の目的は、地球環境の保護にあります。
旧制度の資格保有者・試験合格者は、改正法にかかる事項と熱・電気に共通する知識を補充的に問われたわけです。
熱エネルギー管理士,電気エネルギー管理士 ――(統合)―→ エネルギー管理士
ちなみに、エネルギー管理士の試験は「中小企業診断士」の1次試験(の1日目)と同一日に行なわれます。
もし去年私が中小企業診断士の2次試験に落ちていたら、1次試験も受けなおしでエネルギー管理士も受けなおしという事態になりグダグダな状態になっていたと思われます。(去年受かっといてヨカッタ(;´∀`)
それではエネルギー管理士と中小企業診断士とが何の関係があるのかというと、行政の管轄の上では大いに(?)関係があります。前者の資源エネルギー庁および後者の中小企業庁はいずれも経済産業省の外局です。(試験実施者は財団法人省エネルギーセンターおよび社団法人中小企業診断協会)
そういう事情を反映して、最寄りの経済産業局では関連機関が同じ建物に入っており、パンフレット配布用の棚にはエネルギー管理士試験の願書がありまた中小企業大学校の講座案内などが並んでいたりします。
そういうわけで、近くて遠い資格(?)のエネ管理士と診断士をよろしく。(実務上も両資格を活用しているのは“社内士”のテック青木氏あたり)
余談ながら、エネルギー管理士の知識があっても中小企業診断士試験の点数にはほとんど繋がりません。
旧鉱工業部門の基礎科目を受け継ぐ「運営管理」科目で1,2問程度の上積みになるぐらいでしょうか。「簿記検定」とか「ビジネス実務法務検定」とかに比べると、点数への貢献度は全然違います。
ただ、資格取得後は何らかの相乗効果が期待できます。私はいま、環境系の研究会活動に参加しているのですが、診断士1年目の新入会員として百戦練磨の古株会員の問題意識についていくのに役立っています。
むなぐるま保管庫
ウェブログ「むなぐるま」の管理人からの受託*1により、ウェブログ図書館の保管庫においてブログ記事を保管しました。
コメント欄に貼られたメールアドレスは、むなぐるま管理人の要望により除去しました。
( ・∀・)<「むなぐるま保管庫」を設けたからな!
http://library.jienology.com/munaguruma/
なお、むなぐるま管理人ははてなIDも保有しています。もっぱら本人認証機能(はてなにログインした状態でコメントやブックマークを行なう)を利用するためだそうで、こちらは解約等されることなくそのまま保有いただけるのではないでしょうか。(参照:むなぐるま@はてな)
告知の趣旨で、(ウェブログ図書館で把握している)はてなダイアリーの方々にはてなIDを投げておきます。(id:finalvent id:kanose id:matsunaga id:seijotcp id:michikaifu id:Arisan id:ululun id:santaro_y id:umedamochio id:jkondo)
(関連記事)
2005/7/21 「同時代フィールド・ノート 再論」
2005/4/18 「自明でないブログ記事群」
2005/1/24 「リンクの寿命」
ブログ記事群 「ウェブログ図書館の現状と課題」
*1:ちなみに本日まで10通を越える電子メールのやりとりがありました。